MARKET REPORT 2026

PC価格倍増の
衝撃シナリオ

メモリ価格4倍、SSD原材料2.5倍の高騰。メーカー撤退とAIバブル。
私たちの「生産設備」であるパソコンに、今、一体何が起きているのか。
専門家の分析をもとに、市場崩壊の全貌を読み解く。

MEMORY PRICE 400%

メモリ価格の高騰率
(対前年比)

NAND COST 246%

SSD原材料の上昇率
(2025年Q1比)

FORECAST 2.0x

2026年のPC本体
予想価格倍率

異常なインフレの実態

「最近、パソコンが高い」と感じているなら、その直感は正しい。 現在、自作PCユーザーにとってのスタンダードである「Crucial(Micron製)」メモリの価格推移を見れば、事態の異常さは一目瞭然だ。

NORMAL PRICE (〜2024) ¥14,000
CURRENT PRICE (2025 END) ¥55,000

※上位モデル(32GB×2枚)に至っては、本来2万円台だった製品が10万円台に到達している。 メモリというたった一つのパーツだけで、ミドルクラスのPCが1台買えてしまう異常事態だ。

01

なぜ、これほどまでに
高騰したのか?

AIによる生産ラインの「強奪」

最大の原因は、ChatGPTをはじめとする「AIブーム」にある。 PC用メモリとAIサーバー用メモリは、実は同じ「シリコンウェハ」という材料から作られる。

現在、世界中のデータセンターから、利益率が桁違いに高いサーバー用メモリの注文が殺到している。 メーカーの判断は冷徹だ。彼らは利益の薄いPC向けの生産ラインを物理的にストップさせ、サーバー用に割り当てている。 つまり、私たちが使うメモリは「品薄」なのではなく、「作られてすらいない」状況になりつつあるのだ。

Micronの完全撤退

さらに衝撃的なニュースが市場を駆け巡った。世界シェア3強の一角であるMicron社(Crucialブランド)の発表だ。 彼らは「2026年2月をもって、一般向けメモリの製造を終了する」と宣言した。

安くて高品質なメモリを供給してくれていた主要メーカーが一つ消滅する。 残されたパイの奪い合いが激化し、価格競争が起きなくなることは火を見るよりも明らかだ。

INSIGHT

なぜ増産しないのか?
2020年の「巣ごもり需要」での失敗が原因だ。当時、増産後に在庫の山を抱え大赤字を出したトラウマから、メーカーは「工場は絶対に増やさない。供給を絞って高値を維持する」という戦略を徹底している。

02

カウントダウンは
始まっている

「値上がりするのは来年からだろう」と高を括ってはいけない。業界のトップたちは、すでに警告を発している。

2025.12 - NOW Dell COOが値上げを示唆

「PC価格が15%〜20%値上がりする可能性がある」と発言。これは予測ではなく予告だ。段階的な価格改定はすでに始まっている。

2026.01.01 Lenovo「価格リセット」

公式に「現在の価格設定は全て無効になる」と発表。実質的な大幅値上げ宣言であり、業界標準がここで切り替わる。

LOADING... 国内BTOメーカーの受注停止

マウスコンピューターやサイコム等で、駆け込み需要による注文殺到が発生。「受注停止」や数ヶ月単位の納期遅延が現実化している。

03

不都合な真実

Q. AIバブルが弾ければ安くなる?

残念ながら、その可能性は低い。
今回の買い手は「企業」だからだ。企業にとってPCは仕事道具(生産設備)である。 業務に必要であれば、価格が2倍になっても購入を止めない。 この「予算に糸目をつけない法人需要」が価格を下支えするため、個人が買い控えても市場価格は下がらない。

Q. 中古PCで凌げばいいのでは?

その「逃げ道」も塞がれつつある。
新品が高騰すれば、当然ながら需要は中古へ流れる。 特に2025年10月のWindows 10サポート終了を控え、Win11対応の中古PCは争奪戦となる。「中古なのに新品並みに高い」という状況が、現実味を帯びている。

THE DECISION

専門家の予測では、2026年には20万円のPCが30〜40万円になる可能性が高い。
もし以下の条件に当てはまるなら、「今」動くことが賢明な選択となる。

  • 現在、PCを使用して3年以上経過している
  • 来春、進学や就職で新しいデバイスが必要になる
  • Windows 10のサポート終了までに買い替えたい

必要ないなら買うな。
だが、必要なら——一秒でも早く買え。